歯ぎしりや食いしばりに効果的な「ナイトガード」とは?

歯ぎしりや食いしばりに効果的な「ナイトガード」とは?

寝ているあいだに歯ぎしりや食いしばりをすると、歯がすり減ったり顎関節症になったりするリスクや、顔のエラやほうれい線が目立ってしまう原因となる可能性があります。そこで役に立つのが、歯ぎしりや食いしばりから歯やあごを守る「ナイトガード」です。

今回の記事では、ナイトガードの効果やメリット・デメリットについて解説するとともに、種類や価格、正しいお手入れ方法も紹介していきます。ナイトガードの使用を検討している方はぜひ参考にしてください。

ナイトガードとは

ナイトガードとは

ナイトガードとは、就寝中の歯ぎしりや食いしばりから歯やあごを保護するために使うマウスピースのことです。就寝中の歯ぎしりや食いしばりは自分の意思で防ぐことができませんが、ナイトガードをつけて寝ることで歯やあごにかかる負担を軽減できます。ナイトガードにはソフトタイプとハードタイプの2種類があり、どちらも歯科医院で作成が可能です。

ソフトタイプは柔らかいゴム製の素材でできており、装着による違和感が少ないのがメリットです。ただし、柔らかい素材のため耐久性が低く、歯ぎしりや食いしばりの力が強い場合はナイトガードが破損してしまうことがあります。

一方、ハードタイプはレジンという硬い樹脂素材でできています。ソフトタイプに比べて装着時の違和感が強いものの、強い力が加わっても削れたり穴が開いたりしにくいのがメリットです。

ナイトガードの効果とメリット

ナイトガードの効果とメリット

ナイトガードの効果やメリットは、以下のとおりです。

  • 寝ている間の歯ぎしり・食いしばりを確認できる
  • 歯のすり減りを防ぐ
  • あごにかかる負担を軽減できる
  • 噛み合わせの乱れを調整できる
  • 肩こりや頭痛の改善につながる

ここでは、これらの効果やメリットについて詳しく解説していきます。

寝ているあいだの歯ぎしり・食いしばりを確認できる

寝ているあいだの歯ぎしりや食いしばりは、本人の自覚がないことも少なくありません。しかし、歯ぎしりや食いしばりは歯の消耗や知覚過敏・顎関節症などを引き起こす恐れがあるため、改善するためにはまず自覚することが大切です。

自分が歯ぎしりや食いしばりをしているかどうかわからない場合、就寝中にハードタイプのナイトガードをつけると確認することができます。朝起きたときにナイトガードに傷がついていれば、就寝中に歯ぎしりや食いしばりをしている証拠といえます。

歯のすり減りを防ぐ

就寝中は力のコントロールができないため、起きているときの2~4倍の力で噛みしめているといわれています。歯ぎしりや食いしばりによって歯がすり減ると、外部からの刺激が歯の神経に伝わり、冷たいものがしみる「知覚過敏」が起こることもあります。

ナイトガードをつけることにより、歯と歯が接触しなくなります。強い力で歯ぎしりや食いしばりをしても、歯の代わりにマウスピースが削れるため歯のすり減りを防げるのです。また、詰め物・被せ物の破損や脱離も予防できます。

あごにかかる負担を軽減できる

ナイトガードをつけると、歯だけではなくあごにかかる負担も軽減され、顎関節症のリスクを低下させることができます。顎関節症とは、あごの痛みや不快感、口を大きく開けられないなどの症状を引き起こす状態のことです。ナイトガードを装着すると、食事に使う咀嚼筋(そしゃくきん)・あごの関節の緊張がやわらぎ、顎関節症の改善や予防が期待できます。

噛み合わせの乱れを調整できる

歯科医院でつくるナイトガードは、オーダーメイドで正しい噛み合わせになるように作成できます。そのため、ナイトガードを装着することで噛み合わせの乱れを調整できるというメリットがあります。

噛み合わせは常に一定ではなく、虫歯治療や加齢による歯のすり減りによって少しずつ変わっていきます。噛み合わせがずれると歯やあごに余計な力が加わり、顎関節症を引き起こすほか、虫歯や歯周病・知覚過敏などのあらゆる疾患の原因となります。ナイトガードによって噛み合わせが整えば、さまざまな歯科疾患のリスクを軽減できるのです。

肩こりや頭痛の改善につながる

歯ぎしりや食いしばりによって噛み合わせが悪くなると、あごだけではなく肩や首周りの筋肉も緊張し、肩こりや頭痛を引き起こすことがあります。そのため、ナイトガードによって噛み合わせが改善すれば、肩こりや頭痛も改善できる可能性があります。

ナイトガードのデメリット

ナイトガードのデメリット

前述のとおり、ナイトガードには多くのメリットがありますが、以下のようなデメリットも存在します。

  • 慣れるまで違和感が生じることがある
  • 定期的に作り直す必要がある
  • 起床時にあごの痛みや口の渇きを感じることがある
  • 正しく使わないと細菌が繁殖する
  • 歯列矯正治療中はナイトガードを使えない

ここでは、これらのデメリットについて詳しく解説していきます。

慣れるまで違和感が生じることがある

ナイトガードを初めて使う際は、違和感や軽い痛み・圧迫感などが生じやすく、寝ているあいだに無意識に外してしまう方もいます。しかし、1~2週間程度使用すると徐々に慣れ、違和感や痛みが軽減されることが多いようです。

また、違和感が気になる場合、まずは昼間にナイトガードを使い、慣れてから就寝時に使うという方法もあります。ただし、どうしても違和感がある場合や睡眠が妨げられる場合は、歯科医院でナイトガードを調整してもらいましょう。

定期的に作り直す必要がある

ナイトガードは使っているうちに削れたり欠けたりするため、定期的に作り直す必要があります。そのため、作り直しのたびに費用がかかる点がデメリットです。耐用年数には個人差がありますが、ソフトタイプは半年程度、ハードタイプは2〜3年程度で交換が必要になることが多いでしょう。

なお、保険内では半年以内にナイトガードを作り直すことができない点にも注意が必要です。半年以内にナイトガードが破損した場合、自費で作り直す必要があります。

起床時にあごの痛みや口の渇きを感じることがある

ナイトガードを装着すると歯ぎしりや食いしばりの位置が変わるため、起床時にあごの痛みやだるさを感じることがあります。また、ナイトガードをつけると噛み合わせが高くなり、口を閉じにくくなります。

その結果、朝起きたときに口の渇きを感じることがあります。しかし、1~2週間ほど経過すると顎の痛みや口の渇きは軽減し、ナイトガードを装着したままでも問題なく眠れるようになることがほとんどです。

正しく使わないと細菌が繁殖する

口のなかには多くの細菌が存在するため、ナイトガードにも多くの細菌が付着します。そのため、水での洗浄だけでは長期間使用するうちに細菌が繁殖してしまいます。ナイトガードを外したあとは、毎回洗浄剤で洗うことをおすすめします。

また、歯磨きをせずにナイトガードをつけると、細菌が増殖して虫歯や歯周病・口内炎などを引き起こす可能性があります。ナイトガードは、必ず歯磨きをしたあとに装着しましょう。

歯列矯正治療中はナイトガードを使えない

マウスピースによる矯正治療を受けている場合、ナイトガードは使えません。ナイトガードをつけると歯の動きが制限されてしまうため、歯列矯正治療終了後に歯ぎしり・食いしばりの治療をおこなう必要があります。

ただし、ワイヤーによる歯列矯正の治療を受けている場合はナイトガードを使用できることがあります。歯列矯正中にナイトガードを使用したい方は、一度歯科医師に相談してみるとよいでしょう。

ナイトガードの種類と価格

ナイトガードの購入には、歯科医院で自分専用のナイトガードを作る方法と、市販品から選ぶ方法があります。ここでは、市販のナイトガードと歯科医院で作るナイトガードの違いや、費用の相場について紹介していきます。

歯科医院で作るナイトガード

歯科医院では、歯科技工士が一人ひとりの歯型に合わせてオーダーメイドでナイトガードを作ります。受診から完成までに1〜2週間かかることが多いですが、歯科医が微調整をおこなうためフィット感が良いことがメリットです。

なお、ナイトガードは原則として保険が適用され、費用は3割負担で約3,000円〜5,000円程度が目安となります。ただし、半年以内に作り直す場合は自費となり、約15,000円程度の費用がかかります。

市販のナイトガード

ドラッグストアやインターネット通販などでナイトガードを購入する方法もあります。市販のナイトガードは、型取り不要のタイプと、お湯で柔らかくして自分の歯型に合わせて成形するタイプがあります。市販品は1個500円程度と安価で購入できるものの、歯科医院のナイトガードに比べてフィットしにくく、違和感が残りやすいのがデメリットです。

歯に合わない市販のナイトガードを使うと、歯やあごに余計な負担がかかったり、歯並びが悪くなったりするリスクがあるため注意が必要です。自己判断で市販のナイトガードを使用せず、まずは専門知識のある歯科医に相談することをおすすめします。

ナイトガードの正しいお手入れ方法

ナイトガードの正しいお手入れ方法

ナイトガードは口のなかに入れて使う器具であるため、常に清潔な状態を保つことが大切です。ここからは、ナイトガードの正しいお手入れ方法を紹介していきます。

使用後は必ず洗浄する

朝起きてナイトガードを外したら、流水を使いマウスピース用(入れ歯用)の洗浄剤で必ず洗浄しましょう。また、洗浄材が無い場合は、自宅にある食器用の中性洗剤でも代用できます。洗浄するときは、柔らかい歯ブラシで軽くこすり洗いすると細かい部分の汚れも取れやすくなります。

ただし、研磨剤入りの歯磨き粉の使用は避けてください。研磨剤入りの歯磨き粉を使うとナイトガードに細かい傷がつき、雑菌が繁殖しやすくなってしまいます。また、煮沸消毒したりお湯で洗ったりすると変形してしまうため、水かぬるま湯で洗いましょう。

正しく保管する

ソフトタイプは洗浄後に水気を拭き取り、しっかり乾燥させてから専用ケースで保管しましょう。ハードタイプは乾燥させると変形することがあるため、容器に水を入れて浸けておくことで劣化を防ぐことができます。旅行時などにハードタイプのナイトガードを持ち運ぶ際は、濡らしたティッシュや布でくるんでおきましょう。

歯科医院で定期的にメンテナンスする

ナイトガードは消耗品であるため、使っているうちに破損したり削れたりすることがあります。ナイトガードが破損したら、歯科医院で再度作成してもらいましょう。

また、ナイトガードが破損していなくても、3か月に1回は噛み合わせや消耗具合をチェックしてもらうことをおすすめします。定期検診のタイミングで一緒にナイトガードも確認してもらうとよいでしょう。

ナイトガードに関してよくある質問

ナイトガードに関してよくある質問

最後に、ナイトガードに関してよくある質問に回答していきます。

ナイトガードをつけると虫歯になりやすい?

ナイトガードが直接虫歯の原因になるわけではありません。しかし、洗浄が不十分だとナイトガードに歯石や汚れが蓄積し、口のなかの環境が悪化してしまいます。ナイトガードは毎日ていねいに洗い、正しい方法で保管しましょう。また、虫歯を防ぐためには、必ず歯磨きやフロスなどで口のなかを清潔な状態にしてからナイトガードを装着することも大切です。

歯ぎしりがひどいとき、ナイトガードは上下どちらにつけるの?

歯ぎしりの強さにかかわらず、ナイトガードは上あごだけ装着するのが一般的です。ただし、上あごが小さい方は下あごに装着したほうがつけ心地がよい場合もあります。

ナイトガードで顔が変わるって本当?

ナイトガードを使用したからといって、顔の大きさや形が直接変化することはありません。ただし、ナイトガードによって噛み合わせが改善すると、顔の印象が変わったように感じる可能性があります。また、歯ぎしりや食いしばりによってエラが発達している場合、ナイトガードの装着によって顎の筋肉の緊張が緩和すると顔が小さくなったように見えることもあります。

食いしばりによる顔のお悩みがある方は、こちらの記事もお読みください。
>>食いしばりを改善したら小顔になれる?原因や具体的な対策など解説

まとめ

ナイトガードで歯のすり減りを防ぎ、あごにかかる負担も軽減

ナイトガードを装着することで、歯のすり減りを防ぐとともに、あごにかかる負担も軽減できます。

また、歯科医院では一人ひとりの歯並びに合わせてナイトガードを作成できるため、噛み合わせを改善できるのもメリットのひとつです。噛み合わせが改善すると肩こりや頭痛の軽減にもつながり、全身の健康に良い影響を与えます。

まずは気軽に試してみたい!という方は、市販のナイトガードから始めてみても良いでしょう。

ナイトガードを活用して、歯ぎしり・食いしばりの解消を目指しましょう。

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